遺言書の検認手続き

検認とは

遺言書の検認とは、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など遺言書の内容を確認することで、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。

また、相続人に対して遺言の存在及びその内容を知らせるという目的もあります。

よって、遺言書が有効であるか無効であるかを判断するものではありませんので、判断能力に問題がある状態で作成されたようなものでも、代筆やパソコン印字の自筆証書など、明らかに無効である遺言書であっても、検認の手続きそのものは問題ありません。

公正証書による遺言と遺言書保管手続き利用の場合以外は、必ず、検認を行わなければなりません。

 

検認手続きとは

公正証書遺言でない場合、遺言書の保管者又はこれを発見した相続人は,遺言者の死亡を知った後,遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して,その「検認」を請求しなければなりません。

ただし、遺言書保管手続きによって法務局に保管されている場合は除きます。

 

また,封印のある遺言書は,家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。
遺言書を家庭裁判所に提出しなかったり、検認を経ないで遺言を執行したり、家庭裁判所外で開封したりすると、5万円以下の過料という制裁処分を受けますので、遺言書の保管者や発見者の方は、注意が必要です。

単に封筒に封をせず入れてある遺言書の場合は、そのまま提出すれば問題ありません。

検認の申立から検認手続きの終了までに要する期間は、おおよそ2週間~1ヶ月程度です。

 


民法第1005条(過料)

前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。

検認の申立人

検認の申立を行うのは、以下のいずれかの方となります。

  • 遺言書の保管者
  • 遺言書を発見した相続人


検認の申立先

申立先は、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所になります。

 

東京都 (遺言者の最後の住所地) (申立先)
東京23区内,三宅村,御蔵島村,小笠原村 東京家庭裁判所
八丈町,青ヶ島村 東京家庭裁判所 八丈島出張所
大島町,利島村,新島村,神津島村 東京家庭裁判所 伊豆大島出張所
上記以外の市町村(多摩地区) 東京家庭裁判所 立川支部
神奈川県 (遺言者の最後の住所地) (申立先)
横浜市,鎌倉市,藤沢市,茅ケ崎市,大和市,海老名市,綾瀬市,高座郡(寒川町) 横浜家庭裁判所
相模原市,座間市 横浜家庭裁判所 相模原支部
川崎市 横浜家庭裁判所 川崎支部
横須賀市,逗子市,三浦市,三浦郡(葉山町) 横浜家庭裁判所 横須賀支部
小田原市,秦野市,南足柄市,足柄上郡(中井町 大井町 松田町 山北町 開成町),足柄下郡(箱根町 真鶴町 湯河原町),平塚市,中郡(大磯町 二宮町),厚木市,伊勢原市,愛甲郡(愛川町 清川村) 横浜家庭裁判所 小田原支部
埼玉県 (遺言者の最後の住所地) (申立先)
さいたま市,蕨市,戸田市,朝霞市,志木市,和光市,新座市,川口市,鴻巣市,上尾市,桶川市,北本市,蓮田市,北足立郡(伊奈町) さいたま家庭裁判所
久喜市,加須市,幸手市,白岡市,南埼玉郡(宮代町) さいたま家庭裁判所 久喜出張所
越谷市,春日部市,草加市,八潮市,三郷市,吉川市,北葛飾郡(杉戸町 松伏町) さいたま家庭裁判所 越谷支部
川越市,富士見市,坂戸市,鶴ヶ島市,ふじみ野市,入間郡三芳町,比企郡川島町,所沢市,狭山市,入間市 さいたま家庭裁判所 川越支部
飯能市,日高市,入間郡越生町,毛呂山町,比企郡鳩山町 さいたま家庭裁判所 飯能出張所
熊谷市,行田市,東松山市,羽生市,深谷市,比企郡滑川町,嵐山町,小川町,吉見町,ときがわ町,秩父郡東秩父村,大里郡寄居町,本庄市,児玉郡(美里町 神川町 上里町) さいたま家庭裁判所 熊谷支部
秩父市,秩父郡(横瀬町,皆野町,長瀞町,小鹿野町) さいたま家庭裁判所 秩父支部

 

申立に必要な費用

  • 遺言書(封書の場合は封書)1通につき収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手(申立てされる家庭裁判所と相続人等の人数により異なります。)

 

東京家庭裁判所 84円×((相続人の数×2)-1)枚,10円×8枚
東京家庭裁判所 立川支部 84円×((相続人の数×2))枚
※申立人が相続人以外の場合は84円×2を追加
横浜家庭裁判所 84円×((相続人数+2)枚
さいたま家庭裁判所 84円×((呼び出す人の数)×3)枚
千葉家庭裁判所 84円×((相続人の数)×2)枚

 

申立に必要な書類

(2)添付書類

 

【共通】

1. 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

2. 相続人全員の戸籍謄本

3. 遺言者の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

 

 

【相続人が遺言者の(配偶者と)父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合】

4. 遺言者の直系尊属(相続人と同じ代及び下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母と祖父))で死亡している方がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

 

 

【相続人が不存在の場合,配偶者のみの場合,又は遺言者の(配偶者と)の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合】

4. 遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

5. 遺言者の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

6. 遺言者の兄弟姉妹に死亡している方がいらっしゃる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

7. 代襲者としてのおいめいに死亡している方がいらっしゃる場合,そのおい又はめいの死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

 

 

※同じ書類は1通で足ります。

※審理のために必要な場合は,追加書類の提出を要求されることがあります。

 

 

検認済み証明書の申請

検認の申立てを受けた家庭裁判所は、相続人またはその代理人、利害関係者の立会いのもとで遺言書を開封し、筆記用具や用紙について記録し、筆跡や遺言書の記載内容を確認し、検認調書を作成します。立ち会わなかった相続人や利害関係人には、検認されたことが通知されます。 


検認終了後、検認済証明書の申請(遺言書1通につき150円分の収入印紙と申立人の印鑑が必要となります。)を行い、遺言書に検認済み証明を付してもらう必要があります。


遺言書に検認済み証明が無いと、銀行での預金口座の名義変更や生命保険の解約・払い戻し、不動産の相続や遺贈の登記、自動車の登録、等の手続きを行うことができませんので、ご注意ください。


遺言の内容の実行は、検認の終了後、遺言執行者(遺言執行者の指定がない場合は相続人)が行います。


遺言の内容に非嫡出子(婚姻外の関係で生まれた子)の認知や相続人の取り消しなどがある場合、または、執行者が亡くなっていた場合や辞退したときには、家庭裁判所に遺言執行者の選任申立を行います。 

遺言に関する基礎知識

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